Grund d' zu sein
あの頃。
まだ幼い、純粋だった時代。
死ぬのは、怖くなかった。
怖かったのは、自分が自分じゃなくなる事。
あの方のつけてくれた名前を失う事。
だから、剣を握り締めて、前だけ見て走った。
「ドレークさん。」
彼が私の名を呼んだ。
振り向くと、袖を二回折った制服姿の少年が立っていた。
部隊の中でも、特に小柄な彼はブカブカな制服を着ていた。
月明かり、小さな窓から光が差す。
家具の無い狭い部屋にベッドが二つ。
壁には磨き上げられた剣が掛かっている。
私が・・・私達が、私達を表現する為の唯一の道具。
私達は、少年兵だった。
彼の眼が、月明かりを受けて静かに光る。
彼は、冷たい血の流れる純真な殺人機械。
そして私は、それを操る悪魔だろうか。
なら、魔王は・・・・・・・。
「何だい?」
ベッドに腰掛け、綺麗な金髪の頭に手を置く。
彼の身体は、腕も、脚も、首も、胴も、皆頼りなく、か細かった。
小さな手は白く綺麗で、幾多の命がその手に奪われているとは思えなかった。
ただ、大きな瞳がどこか氷のように冷たい。
「眠れません。」
私と相部屋のこの子は、私が預かっている部隊で最年少。
彼も、あの方が救い上げた子供だと言う。
優しく微笑みかけて頭を撫でてやると、安心したように目を閉じた。
部隊の子供たちは、私にとって弟みたいなもので、いつもこうやって寝かしつけていた。
まだ、この子も甘えたい年頃だろう。
でも、それは決して許されない。
この子の、私達の全ては、あの方のものだから。
「さぁ、お休み。明日も早いからね。」
こくんと素直に頷いて、ベッドに入る。
素直ないい子。こんな子が、天上の兵士だなんて・・・・。
でも、それは不幸な事じゃない。
あの方に救われて、あの方の為に戦えるのだから。
少なくとも、私はそう思う。
窓から、銀色に鈍く輝く月を見た。
十六夜の月が、南の雲の向こうに覗いている。
あの方の優しい横顔が映っている気がした。
この小さな手を血に染めた、魔王のようなあの方。
翌日の晩、少年は居なかった。
戦闘後、敗戦の混乱の中で行方不明。
捕虜になったとも、死亡したとも音沙汰無し。
「私達の居場所が、此処以外の何処にあると言うんだい?」
彼の頭を撫でた右手を見つめ、そっと呟く。
彼にも、消えない名前がある。
あの方が着けてくれた名が。
「何処まで逃げても、君は冷たい殺人機械。そうだろう、シャルティエ。」
今日もまた、窓から月を見る。
西に傾いた月は、紅蓮の炎に焼かれるように、只々紅く輝いていた。
あとがき
折角、設定を作ったので再びオリキャラを使ってみました。
カールとシャルの年齢差は・・・6つですね。
15歳と、9歳。何かあったらショタ・・・・。(笑/死んでおけ)
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