青い二人が赤くなる



男女の差と言うのは染色体の末尾が一つ違うだけ。
だから、大した差じゃないし、あまり深く考えない方が良い。
男だとか女だとか。


そんな自己弁護を十数分さっきから続けている。
しかし、全く精神が落ち着く気がしない。



「ZZZ。」



気持ち良さそうに寝ている彼が恨めしい。
いや、それ自体は問題ないのだ。
ここが彼のベッドで、彼の腕が私の腰に回ってるのが問題。


そっと身体を捩って逃れようとする。
あまり強引にして、起こしてしまうのも悪い気がする。
昨日まで徹夜続きで大変だったみたいだし。



「よっしょ・・・あっ、わ。」



離れようとしたら、両腕が私の腰にしっかりと巻きついた。
えっと、その、私は抱き枕ではないんだが。
あと何かさっきまでより密着度合いが増してる気がするし。



「はぁ。」



本格的に逃げられなくなってしまった。
時計を見ると、午前4時が示されていた。
彼が起きるまで2時間。
開き直ってもう一眠りしても良いのだが、眠れる気がしない。



「何があったんだろう。」



記憶は全くない。
昨日仕事が済んでから何があったかのだろう。
ただ、とても反省すべき事があるような気がする。


いくら男同士とは言え、一つのベッドの中。
しかも、半分くらい服が脱げている状態。


遠慮がちに彼の寝顔を見る。
綺麗な紫色の髪が寝息に合わせて揺れている。
その様子を眺めていると、思わずその気になりそうで怖い。



「落ち着け。」



自制、自粛、自省。
慌てて顔を背けると、彼が少し動いた。
起こしたかな、と思ったが起きた様子はない。
ただ、少し姿勢が変わっただけ。



「んっ?」



違和感。
何か腿の辺りにあっている気がする。
そのー、何ていうか、あれが。
しかも朝だからだろうか・・・反応している。



「・・・んっ。」



思わず逃げを打とうとすると、彼が声を漏らす。
何か刺激が伝わってしまったらしい。
と、言うか、今の声は反則ではないだろうか。


彼が男だと言うのは重々承知だ。
さっきから腿の辺りに当たっていて気が気がじゃない。
しかし、それでも全く問題なく興奮できてしまうのは如何言う訳だろう。



「いや、待て、俺はホモじゃないっ。」



思わず語勢が強くなる。
誰かに聞かれていたらどうしよう。


もう一度彼の寝顔を覗き込む。
確かに整った顔、だけど間違いなく男性の顔。
ここ数日の激務の所為か、髭も碌に剃っていないのだろう。
口元に微かにその気配が出ている辺りも扇情的に映る。



「おはようございます。」



私が見つめていた彼の寝顔が口を開く。
それに継いで、瞼が上がりアメジストの瞳がこちらを見詰めていた。
ビックリして、声も出ない。
顔が熱い。


彼は機嫌の良さそうな笑顔で起き上がると、服を直し始める。
そして少し乱れた髪を整えて、一回伸びをした。
それからもう一度、私を顧みた。



「昨晩の事、気になる?」



薄い笑顔。
私は目が合わせられない。
クスッと声を立てて彼が笑うのが分かった。



「何もありませんよ。」



昨日、翌日が久々の休みだからと二人で飲みに行ったらしい。
そこで私は酔い潰れて、彼の部屋で眠ってしまったのだとか。
それが本当なのか嘘なのか、私には見抜けない。



「む・・・・。」



「そんな困った顔しない。」



苦笑されて、何だか腹が立つ。
きっと彼には昨晩からの醜態を全部見られているのだろう。
それが何だか腹立たしいやら、情けないやら。



「まぁ、酔っての事は気にしない方が良いですよ。」



フォローにもならない一言。
まるで酔った勢いで何かしてしまったかのような発言。
ベタベタ触ってたり、妙な事を口にしてたらどうしよう。


彼に如何思われているか不安でならない。
せめて、まぁ頼れる同僚ぐらいの立場は守りたい。


って、何かこれじゃまるで、私に他の気持ちがあるみたいじゃないかっ。



「あっ、目ヤニ付いてますよ。」



正直言うと、あんまりじろじろ見ないで欲しい。
良く分からないけれど私は彼を直視できないのだ、さっきから何故か。



「何処?」



「擦らない擦らない。取って上げますから。」



彼の白い手が伸びてくる。
何だか私は緊張しつつ、おずおずと瞼を下ろす。
スッと右の睫を撫でられて、済んだのかと眼を開く、と。



「・・・・・ん!?」



物凄いアップで彼の顔。
塞がれている口に柔らかく心地良い感触。
えっ、その、これは、その・・・。



「えっ、これはっ。」



「キスですけど。」



知ってるけど、そうじゃなくて。
その、なんていうか、どう捉えたら良いのかと言うか。
つまり、どういうつもりなのか知りたい訳で。


どうしたら良いのか分からない私。
彼の唇が艶々と光っているのは、私と重なっていた所為だと思うと眩暈がする。
そんな私の気も知らずに、彼は微笑のままで口を開く。



「あと、私は『ホモ』でも全然構いませんから。」



ニッコリ笑って、彼は扉の外へ消える。
きっと彼は私の動揺する様子を面白がっているに違いない。


何の気なしに口元へ手をやる。
彼の感触が残っているような、いないような。


そして、まだ私は彼のベッドに入ったままだという事実に赤面するのでした。














ちなみに扉の向こう。



バタン、と背後で扉の閉まる音。
彼が何事か呟いているのが聞こえる。
聞きたいような聞きたくないような。
正直頭がさっきから上手く働いていない。


きっと、同じベッドで眠るなんて馬鹿な事した所為だ。
結局殆んど眠れてないし、彼が起きてからは狸寝入りしちゃったし。


あー、何て事言ったんだろう。
それに何か勢いで、キスとかまで。


自分の大胆さが恐ろしい。
しかも、有り得ないくらい浮かれてる自分が怖い。
さっきまでの緊張とか照れとかが一気に襲ってくる。


立っていられなくなってへたり込む。
まだ朝早くて助かった。
人通りの多い時間だったら恥ずかしくて死ぬ。


ふと、唇に触れる。
彼の唇は不思議なほど柔らかくて暖かだった。



「ハマりそう。」



呟いて、また赤面。


































あとがき

ガキかお前らっ!!!!






















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