12月30日21時43分


時は、地上暦20年。



天地が戦端を開き、もう20年目になる。
大地は荒れ、人々の暮らしは天地共に苦しい状況にあった。
天地を厚い雲が分け、その間には絶え間ない火花が散っていた。



その戦いが、終わろうとしている。
有能な地上軍幹部の台頭。
ダイクロフト開発メンバーの投降。
それに伴う、新型レンズ兵器の開発。



地上軍は、戦争初期の劣勢を覆しつつあった。



それでも、天地両軍の戦力差は3倍近くある。
好転しつつあると言ってもその差は大きい。
長期戦により、地上の物資の生産は落ち続け、難民も増え続けている。



「これ以上の戦争長期化は、人類の存亡に関わる。」
これが、地上軍総司令部所属幕僚の統一見解だった。



地上暦20年12月28日
地上軍参謀本部は、カーレル=ベルセリオスにより、「天上都市攻略作戦」を採択。
満場一致にて、最終作戦は議決された。
作戦開始は、12月31日04:00。
長きに渡る戦いの決着は、確実に近づきつつあった。
















「悪趣味だな。」



決戦前夜を静かに過ごしたい。
そう言ったのに、彼はそれを聞こうとしない。



明日、死ぬかもしれない。
もう、これが最後かもしれない。
それなのに、彼は全く変わらない。



「俺か?」



口付けた首筋から顔を離し、彼は上目遣いでディムロスを見る。
漆黒の眼が、吸い寄せられるくらい澄み渡っている。



「お前も・・・・私もだ。」



その一言に、彼・・・ノリス=カルナックは、微かに唇の端を吊り上げた。
敵味方、皆が怖れる氷の微笑。
近くで見ると、さほどでも無い事を、ディムロスは知っている。



「よりによって・・・・。」



呆れた声を洩らすと、ノリスは言い切らせずに唇を奪う。
拒む事もせず、ディムロスは受け止めた。
蝋燭一つの明りの中、銀糸が二人を結んで光る。



「よりによって?」



自分で遮っておいて、ノリスはわざわざ聞き返す。
深い口付けに、息を荒くしながらディムロスは苦笑した。



「よりによって・・・・お前が私を。」



聞きながら、ノリスはゆっくりとディムロスをベッドに倒す。
質素なベッドの軋む音。
煤汚れた彼の部屋の天井と、彼の間にノリスが居る。



漆黒の眼は真っ直ぐに、見つめている。
それを受け止めるように、蒼眼を彼に向けた。



「嫌か?」



「だから、私も悪趣味だ・・・・と。」



婉曲的は一言でも、双方の理解には充分だった。
ディムロスは少し恥かしげに目を逸らした。
ちょっと満足げに、ノリスは微笑んだ。
さっきの氷とは違う、獲物を狩る猛禽の笑み。



肌がゾクリと粟立った。
同時に血が沸き、熱くなる。



「これで・・・・。」



「これで?」



「明日私が死んだら、お前の所為だ。」



顔を背けたままで、目を合わせずに彼は言った。
微かに切れ長の目を細め、ノリスはディムロスへと手を伸ばす。
細い片腕で彼を抱き締め、服の釦へ指を掛けた。



「未練がある者から死んでいく。」



真っ直ぐに、蒼い双眸がノリスを見詰める。
射すような、そして掴むような視線。



「何だ、命が惜しいか?」



「お前の所為でな。」



いつの間にか、ノリスの片手は器用にも、ディムロスの服を剥いでいた。
夜気に触れ、また肌が粟立つ。
白い指が動く度、白い肌が波打ち、揺れた。



「安心しろ。」



一言、耳元で低く囁いた。
その音に、ディムロスは思わず身を震わせた。



「お前の傍には、俺が居る。」



15センチの至近距離から、真っ直ぐに一言。
見詰める瞳は闇を帯び、彼の全てを飲み込んで行く。
ディムロスは、自分から腕を回して唇を寄せた。















蝋燭はもう燃え尽きていた。
ノリスの瞳と同じ暗黒の中に、微かな音が響いていた。



喘ぎと、濡れ音、ベッドの軋みと息遣い。




掠れる声が、互いを呼び合う。
今の生を惜しむかのように。















作戦開始まで、あと6時間。















あとがき

ぱっとしねぇ・・・・。
あぁ、どうも、最近平田オリザの芝居に凝ってます、マコです。(別に如何でも良い)
やっぱりねぇ、何か上手い事行かないんですよ。
前夜ネタって、ずっと考えてたんですけどねぇ。


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