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「直ります?」 「だいぶ古いし、交換しろよ。」 「・・・仕方ありませんね。」 カバーを填め込み、ネジやナットを締め直してオイル式ヒーターが原形を取り戻す。尤も、それが本来の機能を果し得ないことは明らかになってしまったのだが。その傍らで彼はレンチやドライバー、名前も知らないような工具類を片付け始める。 「週末までに手配する。」 「ええ、助かります。」 暖房が動かない、と何かの拍子で言っただけで彼がわざわざやってくるとは思わなかった。彼は技術将校であって工兵連隊長であって、暖房の修理をするような立場ではないのだから。 「忙しい所すみませんでしたね。」 「良いよ別に。手空いてたし。」 先月の決算報告がまだ出ていない辺り、手が空いていたとは思えないのだけれど、現に彼は来てくれた訳で。そこで、彼は私への個人的な好意で来てくれたのだと都合良く解釈する程度の楽観的な思考と彼に対する好意を私は持っていた。 「お礼です。」 片付けが済んで、立ち上がった所の彼の頬に口付けた。驚いたのか目を二、三度瞬くものの彼の表情は変わらず、奇襲に成功して満足げな表情をしていただろう私を見詰めた。 「足りませんか?」 今度は唇に。啄ばむように口付けを落として、だんだんと深まっていく。主導権を握る感じは悪くない。彼もキスに応じ始め、長い舌が歯列をなぞってくる。 「珍しいね。」 「貴方が優しいのも珍しい。」 「・・・・・・なるほど。」 「ノリス大佐の真似ですか?」 「あんなにお節介じゃないし。」 ディムロス中将の髪の手入れはノリス大佐がやっているのだとアトワイト中佐に聞いた。お節介で押し付けがましい愛情表現があの人らしくて、彼らに似合っていて良い。 一方の彼は、身勝手で淡々としている辺りがらしいと言えばらしいが、基本的には冷たい。だから、呼んでもいないのに突然「ヒーター見てやる」と現れたのが意外だったし嬉しかった。 「別に呼んでもないのに。」 「呼ばれなかったな。」 「仮に呼んだら来てくれました?」 「呼ばないだろ、仮にでも。」 「・・・・・・なるほど。」 納得が半分。もう半分はこの人が意外と私のことをちゃんと知ってるってことが分かった嬉しさ。確かに私は、困った時に彼を呼んだりしないだろうな。と言うか、彼じゃなくても、困っても誰も呼ばないと思う。だって大体のことは自分で何とか出来てしまうから。 ・・・・・可愛くないな。良い歳した男が可愛くなりたい、なんて言うもんじゃないけど、でも少しくらい。さっきも「お礼です」なんて、あんな空かした感じじゃなくて、もっと何か良い方法があったと思うのに。 「ま、万が一呼ばれたら行くんだろうけど。」 「どうしたんです?今日、何か変ですよ。」 「何笑ってんだよ。」 「だって、妙に優しいので、つい。」 溜息半分に優しい言葉を漏らす彼に、つい笑ってしまった。それを見て不服そうな顔をする彼だけれど目が優しい。 「俺の優しさは下心あるけどね。」 「別に構いませんよ。」 私が可愛くないせいか、彼がムードを作らないせいか、なかなか甘い空気と言うものにはならないけれど、暖房が効かない寒い部屋で彼に抱き締められれば私にとっては十分その気になる訳で。 「お礼をし足りないなと思っていた所ですから。」 「へー、乗り気じゃん。」 「いつも乗り気ですよ。」 「結構抵抗するくせに。」 「そういうの好きじゃないですか?」 「そういうのも、好きかな。アンタは?」 喋っている間にベッドに倒されて、彼が私を見下ろしている。マットの冷たさが、自分の身体の熱さを実感させる。 「私は、別に。」 「へー。」 「・・・・今日は抵抗しませんから。」 「じゃ、優しくしようか?」 そう言う彼の表情が本当に優しかったので、珍しく優しい彼に甘えてしまいたかったのだけれど、どう返事をして良いものか分からず、目を逸らしながら頷いた。その様子を彼はじっと見詰めていて、ハッキリしなかった自分が逆に恥ずかしくなって固まってしまう。 ・・・・・・初物か、私は。 「アンタ、たまに可愛いよな。」 フッと笑った彼の笑顔と恥ずかしさと漂う甘い感じの空気に耐えられなくなる。確かに可愛いと思われたいと思わなくもなかったけれど、いや、望んでいたのはこんなものでは、確かにそんな雰囲気にはなったけれど。え、じゃあ、という事は成功したって事?そりゃ、可愛いと言われて色々複雑ではあれ嬉しいのだけれど・・・・あぁぁぁぁっ、もう。 「はっ・・・恥ずかしい。」 「あんま煽るなよ。がつがつするぞ?」 「いや、その・・・ガツガツしてくれた方が、まだ。」 「へー。」 「だから・・・その、早く・・・。」 「アンタの照れる顔、好きなんだけど。」 彼の手が私の頬に伸びて、無理やり目を合わせられる。穏やかな表情で私を見詰めながら、ごく軽いキスが落ちてくる。彼はあくまでじっくり優しくするつもりらしい。それを望んだはずの私は、随分盛り上がってしまっていて、とっくに余裕がない。服を脱がしていく彼の手がもどかしくて、自然と足が彼に絡んで行く。 「あ、服、脱ぐから。」 「私がやりますよ。」 「じゃ、宜しく。」 一旦離れようとした彼を捕まえて、上着のボタンを外していく。お互いに服を脱がし合う瞬間がとても淫靡だと思うのは私だけだろうか。あぁ、どうやら相当キてるな、私の頭。上着とインナーのシャツ、厚手のパンツ、肌着・・・お互い何も纏わない姿になって、抱き合う。室温の低さにも関わらず、汗が浮くくらいに熱い。 「余裕ねーな。」 「悪かったですね。」 「俺もな。」 余裕がないように思えなくて腹が立つけれど、すまし顔からは想像もつかないくらいに彼のは熱く脈打っていた。指先の愛撫に応えて目を細める彼の表情を見ているこっちが興奮してしまう。彼の指先が耳の裏を擽って、それから苦しげに息を吐く私の口へ入り込んだ。歯茎の列や舌の裏を刺激する指先に必死で舌を絡めて愛撫に応える。 「手、休むなよ。」 空いてる方の手で胸を弄りながら言われ、必死に手を動かすものの、口と胸への刺激でままならない。触られてもいない下半身はすでに限界を訴えている。口から彼の指が出て行き、息を吸う間もなく唇で塞がれる。ほぼ同時に、唾液が絡んだ指先が私の中へ入ってくるのが分かった。 「キツイな。」 「うっ・・・あっ。」 無意識に掠れた声が上がる。異物感と快感に鳥肌が立つ。何かに縋りたいような気持ちになって彼の首に腕を絡め、息苦しいのに離れたくなくて唇を重ねた。中でゆっくりと動く彼の指の形がリアルに感じられて興奮が高まる。 「増やすよ?」 「ええ・・・はぁ、大丈夫、です。」 彼の長い中指が入ってくると臍の裏ぐらいまで届いているんじゃないかという錯覚に陥る。二本の指が中を広げるように動いて、もう片方の手は胸から張り詰めた私のへと移った。前後を責められる快感に流されるまま、彼に縋る。快感でおかしくなりそうなのに彼に縋っていると安心出来てしまうのだから、余程私は彼が好きなのだろう。と言うか、好きだ。どうしよう、言葉にしたい。 「はっ、あ・・・好き、好き・・・・。」 言葉にすると気持ちが倍になったみたいに益々愛しさが込み上げる。一瞬驚いた顔をした彼に、得意げな笑顔を見せる。今日、二度目の奇襲は成功したようだ。と、彼の眉間に皺が寄って舌打ちしながら指が抜かれた。 「煽るなって言ってんだろ・・・。」 余裕に見える彼が私の言葉一つで一杯一杯になる様を見るのは楽しいし、嬉しいし、愛しい。そのせいで多少乱暴にされたって、全然嫌ではないし、むしろ・・・。 「ふっ、はぁ、あっあぁ。」 一気に入ってきた彼に思考を中断される。普段見慣れない切羽詰った顔の彼が私を見下ろしていた。彼の繊細な指とは全く違う圧迫感が内臓を中から押していくのだけれど、苦痛なんか殆どなくて、言いようのない満足感と増幅された快感が体を支配する。気がついたら前も触られていて、もう今にも限界を迎えてしまいそうになる。 「すっ・・・好き、好き、です。あっ、はぁ。」 「・・・・俺も。」 普段は言えないような言葉を浴びせかける私に対して、彼が溜息混じりに漏らした言葉に我慢の限界が来て、だらしなく精を撒き散らしながら彼の熱を受け止めた。 「シャワー浴びたら、部屋行きますから。」 「ああ。」 甘い余韻のせいもあって、余りにスムーズに言葉が出た。それを予想していたかのように何の間もなく彼が受け容れる。この慣れた感じの遣り取りが彼と私の距離を示しているようで嬉しくなった。 「でも、俺の部屋、宿代高いよ。」 不敵に笑う彼。そう言うと思った。でも私としては望む所だ。体を起こして彼に跨って見下ろす。 「先払いで良いですか?」 あとがき 久々にエロを書いてみたんだけどどうかしら? クリスマス1時→違和感に慣れる頃→今作って言う流れです。ハロイクは本当に書き易い。9kか・・・まぁ、纏まったほうじゃないかな?エロになると冗長になってしまうのは勘弁して下さい。 BACK |