|
School Life
家に居場所がないと感じ始めたのは中2の夏頃だった。 親父は血の繋がらない息子に良くしてくれているけど、俺と兄貴への扱いがかなり違う。いや、あの人は善人だから差別してるみたいなあれじゃないけど。 「親父と兄貴がちゅーしてんだよ。」 軽い気持ちでポロッと話したら当時の友達は当然絶句。元々少なかった友達がまたちょっと減った。まぁ、気持ち分かるよ。だってホモだぜ、ホモ。しかも親子だし。 帰ったら親子でいちゃつくのを見なきゃならない訳で、当然のように俺は家に寄り付かなくなった。夜中に家に帰らずにブラブラしてる奴らを総称して不良と言うらしく、親父と兄貴がラブラブなせいで俺は不良になりました。 「ハロルド!また夜中に出歩いて!」 高校に入って不良歴二年。兄貴に叱られるのも慣れた。あんたらのせいだよ、と思わないこともないけど、兄貴が幸せなのは良いことだから好きにしてくれれば良いと思う。 「何かあったかと思って心配したんだよ?」 「俺は兄貴のケツの方がしんぱーい。」 あ、固まった。てか頬を赤らめるとかってリアルな反応はホント辞めて欲しい。イメージしたくないけどイメージしちゃうし。てか親父、犯罪だろ。20離れてんだぞ。 溜息を吐きながら兄貴の脇を通り過ぎようとすると、我に返ったらしく右手首を掴まれた。皮が擦れて、少し腫れている手に痛みが走った。あーあ、目聡いんだよ、この人は。特に俺と親父のことに関しては。いや、親父に関してはもっとなのかも。あ、これ嫉妬?やだなぁ、そういうの。 「また喧嘩?」 「絡まれてるのがいたから助けたんだよ。」 「本当に?」 「ホントだよ。」 兄貴を振り払って自分の寝室に向かった。最近、兄貴は自分の寝室を使わずに親父と一緒に寝てるらしい。ここまで大っぴらだと逆に清々しいよね。どういう神経してんのかな、この人達。 自分の部屋に引っ込んで一安心。自分の右手を見る。頭を殴ったからちょっと痛かった。三人もいたし。次から蹴ることにしよう、うん。 「はー。」 ベッドに身を投げ出して溜息。兄貴や親父のせいじゃなく、助けてやった奴のせい。別に助けると言うか良い口実だからぶん殴っただけだけど。でも、「何で暴力に訴えるんだ」と来たからびっくりした。あの剣幕があんなら最初から自分で追い払えよ。 イライラして一服したい気分だった。ポケットを探ると空の紙箱だけが出てきて、またイライラが募る。今から買いに行くのも面倒臭いから諦めて寝る。 今日は厄日だ。 俺は不良だけど遅刻はしない。ちゃんと家を出ないと兄貴がうるさいし、校門までは絶対に付いてくるし。兄貴に引っ張られて登校するのが嫌だから仕方なく俺が先に家を出て、部活の朝練をまだやってる時間に登校する。 朝早くからご苦労にも坊主頭でボール追っ掛けてる奴らやら、白黒のボール蹴っ飛ばして騒いでる奴らやら、この時間帯に学校にいる奴らはどう見ても俺とは人種が違う。 「ハロルド・ベルセリオス。」 だから、急に名前を呼ばれて驚いた。てか、普通フルネームで呼ばれただけでも驚くし。だからアホ面で振り向いたと思うけど、それは多分仕方ない。 「ハロルド・ベルセリオスだな?」 運動部の短髪とは対照的に長く伸ばした髪が春の風にさらさら靡いていた。どっかで見たな、と一瞬考えてすぐに思い出した。忘れるはずがない昨日の今日だから。と言うか、12時間も経っていないから。 「あ、昨日の。」 「手を出せ。」 俺の話を全く聞かず、そいつは昨日の兄貴と同じように俺の手首を掴んだ。あ、こいつ意外に指細い。兄貴の手に似てる。 そんなことに気を取られていたら、右手を一瞥したそいつにそのままズルズルと引き摺られてしまった。いや、こいつ雑魚に絡まれてた割に力も強いんだけど。 「離せよ。」 「授業まで時間はある。」 「そういうことじゃなくて。」 「部活もやってないんだろ。」 「いや、そうだけど。てかお前誰だよ。」 保健室に着いて、教師とにこやかにあいさつを交わしたそいつは俺を椅子に座らせて漸く手を離した。腫れたまま放っておいた右手に慣れた手付きで包帯を巻く。何なんだよ、こいつは。 「言う事が三つある。」 「あん?」 「夜中出歩くな。喧嘩をするな。」 急に何だよ?てか、三つとか言って二つしか言ってねーじゃん。あと一つは?と思ったら、そいつは俺の制服のポケットに手を突っ込み、まだ開封してもいない煙草のパッケージを抜き取った。 「煙草を吸うな。以上。行って良い。」 同時に手当も終わり、呆気に取られた俺を置いてそいつはさっさと保健室を出て行った。意味が分からない。煙草取られたし、質問には全然答えないし、何か説教されたし。 「待てよ。お前誰だよ。」 追い掛けると振り向いたそいつは面倒臭そうに口を開いた。 「廊下を走るな。」 「・・・・。」 呆気に取られて忘れてたけれど、多分キレてこいつのことぶん殴ってもおかしくないくらいのことをされている気がする。こいつ尽く俺の言葉無視してくれちゃってるし。 思わず拳を握り込むと、何かに気付いた顔をしたそいつがこっちに寄ってくる。何だよ、やる気か?身構えかけた俺を無視するように殺気ゼロで目の前までやってきたそいつは、俺の首元に手を伸ばして制服のシャツの二番目のボタンを留めた。 「ディムロス・ティンバーだ。ボタンはちゃんと留めろ。」 「・・・・!!!」 怒りやら驚きやら何だか恥ずかしいやらで我を忘れているうちにそいつの背中は随分離れた廊下の向こうへ行ってしまっていた。イライラする。こういうイライラした時に吸いたい煙草を取られてしまって更にイライラする。 今日も厄日か。 あとがき 長くなりそうだったので分割で。 学園モノハロディムです。ハロルドは複雑な家庭環境(笑)の出身なので不良になってしまいました、と言う設定です。兄貴と親父のカップルとか家に居場所なさすぎるwww 今後は舎弟のシャルティエやらアトワイト先輩やら出して行きたいと思います。 書いてて楽しいなハロルドは。 BACK |