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今年は比較的南部が温暖だったらしい。 南部の気候はカカオや砂糖の収穫量に影響を与える。 カカオや砂糖の収量が多ければチョコレートの価格が下がる。 チョコレートの価格が下がれば、この時期には沢山出回る。 と、いう訳でそこら中をチョコレートが飛び交う今日この頃。 「憲兵隊長、法務部一同、次は・・・。」 私の知人には義理堅い女性が多いらしい。 綺麗な包装がそこら中に積み重なっている。 そして、一つ一つその贈り主を記録しては仕分けするノリス。 手作りか否か、日持ちするか否か、消化順まできちんと決めてくれる。 こういう妙な所で有能さを発揮するから困った奴だ。 「個数は昨年比1.1倍。2月中には消化出来るな。」 「また毎日チョコレート漬けか・・・。」 「傷ませないように食わなきゃいけないんだろ?」 「んー、うむ。」 「気持ちだけ貰うんでも良いと思うけどな、俺は。」 「食べ物を粗末にする訳にはいかないだろう。」 「なら、頑張れ。」 言うのは簡単だがなかなか手強いんだ、この量になると。 勿論貰えるのは嬉しいし、ありがたいとは思う。 しかし、量が量。 「少し、手伝わないか?」 「贈り主はお前に食べて欲しいと思ってるだろうなぁ。」 「・・・・分かった。」 「よし、じゃ、この辺から行くか。昼飯代わりな。」 「虫歯になりそうだ。」 上品な箱入りの生チョコレートを口に放り込む。 口溶け良く、すっと消えていくような感じは悪くない。 そもそも甘いものは嫌いじゃないから美味しいと思う。 しかし、昼食代わりと言うのは・・・。 隣を見ると集計を終えたノリスがベーグルを齧っている。 「お前は貰ったのか?」 「ま、多少は。お前のついでで。」 「何個?」 「情報部で2個、第一で3個、あとアトワイトがくれた。」 「・・・羨ましい。」 「沢山貰えて良いじゃねーか。」 沢山貰えて良い。が、限度がある。 20個には日頃の感謝を込めた手紙つき。 いかにも高級な感じのものが15個。 早めに食べるように言われたものが7個。 日持ちしますからゆっくりどうぞ、と言われたのが10個。 憂鬱だ。小出しに貰えたら良いのに。 「全部で何個あるんだ?」 「44個。」 「聞かない方が良かった。」 「そう言うなよ。」 からからと笑って2個目のベーグルを片付け、スープを飲む。 今日は赤ビートのスープ、ボルシチのようだ。 普通の昼食が暫く摂れないかと思うと、早くも羨ましい。 ボルシチを飲み干して軽めの昼食を終えた彼が席を立つ。 時計を見ると、もうそろそろ昼休みも終わる時刻だ。 「じゃ、そろそろ仕事戻るわ。」 「ああ。私もすぐ行く。」 少し沈黙。 部屋の外へ出かけたノリスが戻る。 小さなチェック柄の包みが飛んできた。 受け止めて、小さな茶色い箱を彼に手渡す。 お互い無言で、私は彼の顔も見ない。 逃げ出したいような緊張感の中、彼が微かに口を開いた。 「毎年、どうも。」 「こちらこそ。」 バタン、とやや強くドアの閉まる音。 短いながら緊迫した時間が解けて、ホッと一息。 仕事に戻る前に、集計結果を書き換えないと。 総数45、うち本命1。 本命と書いた自分が恥ずかしくて顔から火が出るかと思った。 あとがき:火が出るかと思うのはこっちですね。(笑) BACK |